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2-(b) ビワヨシノボリ

Rhinogobius  sp. BW (Biwa Lake type)

●トウヨシの仲間 TOP

 ★ 分布と考察

 ★ 形態の比較

  ★ 別種?同種?交雑個体等

1. トウヨシノボリ類

 1-(a) 橙色型

 1-(b) 琵琶湖橙色型

 1-(c) 東日本型

2. シマヒレヨシノボリ類

 2-(a) シマヒレヨシノボリ

 2-(b) ビワヨシノボリ

 2-(c) ウシヨシノボリ

 

 琶湖水系に見られるヨシノボリで、 観察できるのは湖岸に上がってくる時期に限られると考えられていましたが、日本淡水魚類愛護会によると、流入河川で一生を過ごすものもいるようです。 にオスにはヨシノボリ類の中でもかなり特異な特徴が現れ、美しいヨシノボリのひとつと言えます。 お、本ページの写真の個体はいずれも湖内集団の個体です。

 

外見の特徴

 種の特筆すべき特徴はオスの形態にあります。 番の特徴は第2背びれと尻びれ、胸びれが大きく伸びることです。 れは湖内集団が湖岸に上がってくる時期から徐々に顕著になる特徴のようで、伸び具合が個体差なのかどうかを確かめようと思って採集したおいた、ひれがあまり伸びていなかったオスでも、飼育しているうちに伸びてくる様子が見られました。 徴が顕著になるまではシマヒレヨシノボリと同様にオスの尻びれと尾びれ下部が赤橙色に染まるのですが、尻びれが伸びてくると体全体が暗い色になるの同時に赤橙色は引いていきます。 びれや尾びれの端部には金色ないし青白い色が出て、尾びれの下部から尻びれにかけては青みが強い色になります。

メスはとても地味で体も小さいですが、胸びれの基底上部には青い斑点が見られます。 抱卵時のお腹の膨らみも控えめで、この写真の姿でも充分に抱卵している状態です。

 た、成熟したオスでは第1背びれは第2背びれより高さが低く、極端に小さい印象を受けます。 2背びれと尾びれの根元付近には縞模様が少し見られます。 つきは鼻先が短く、下あごが上に向かって反り上がるような独特の顔つきになります。 のせいで、あごの下が美しい青色に染まる様子が正面からでも見られます。 らのあたりや目の後ろ、上唇などは鮮やかな黄橙色が現れ、あごの青とのコントラストはとてもきれいです。

 れだけ特徴のはっきりしたオスに対して、メスはあまり明瞭な特徴はありません。 だし、同所的に生息するトウヨシノボリのメスとは斑紋や行動などで区別することができます。 なわち、トウヨシノボリとは異なり、頬には斑点模様がなく、体の模様は不明瞭です。 の側面に青く光るウロコはなく、モノトーンの地味な魚に見えます。 琶湖のトウヨシノボリのメスは比較的鼻先が長くなるのに対し、本種のメスは短く丸みのある顔をしています。 シノボリ類の共通の特徴でもある、目から鼻にかけての線模様は黒い色をしており、赤い色をしているトウヨシノボリとのよい判別基準のひとつです。 びれの基底上部には、おそらく幼魚の頃は雌雄ともにあると思われる青色の斑点が残っています。 た、同じ時期に見られるオスと比べてメスの大きさが小さいことも特徴のひとつと言えるでしょう。

 

 

分布状況

 琶湖内で季節に応じた回遊生活をしている集団は、初夏のころに琵琶湖の湖岸に見られ、このほかに流入河川で一生を過ごす集団があるようです。 まのところ見かけるのが困難なほどの減少傾向はなく、水産加工品にも多く見られるなど安定して生息しているように思われますが、季節に応じて回遊するサイクルのどこかで問題が生じると一気に深刻な状況となることも無いとはいえない魚です。 た、かつては湖内での生息域が現在以上に広かったかもしれないので、現状に問題が無いとも言い切れない状態なのではないかと思います。

 

 

生活

色彩的に見てもなんとも言えない美しさのあるヨシノボリです。 特にのどや顔の黄橙色とあごの青の鮮やかさは強烈です。

 琶湖で独特の回遊生活をする湖内集団では、生活サイクルは他のヨシノボリとは大きく異なっています。 夏の頃に湖岸で孵化した稚魚は浮遊・遊泳生活に移り、ある程度の大きさになると深いところへ集団で移動するようです。 湖底でどのような移動生活を送っているのかはわかりませんが、また翌年の初夏に湖岸に戻ってくるというサイクルで生活しています。

 た、本種は年魚(一年で生涯を終えて世代の交代を毎年繰り返している魚)であると言われており、それは同じ時期に見られる個体に大きさの差があまりないことからも示唆されています。(ただし、雌雄差はあります。)

 殖期には、オスが縄張りを強く意識して他種やメスを追い払っている様子や、メスに求愛している様子が観察できます。 きには気が強いヌマチチブをも追い払う様子が見られ、年魚らしく、その年の産卵に必死に臨んでいる姿には感動すら覚えます。 種が湖岸にいる時期には、同所的に生息するトウヨシノボリは繁殖期を終えており、長い歴史の中をしっかりと住み分けながら歩んできて、共存してきたことがうかがえます。 きく伸びたオスのひれは、中層を泳ぐのに何らかの利点がありそうな気もしますが、観察した限りでは湖岸で中層を泳ぐ様子はあまり見られませんでした。 っとも、湖岸は波打ち際に近いので意外と不規則に水流が変動しており、中層に浮くとすぐに縄張りの外へ流されてしまうのかもしれません。 た、ひれが大きく伸びるのは湖岸に接岸してからということで、流れの無い深いところにいる段階ではあまり伸びていないことになります。 の大きなひれが湖岸での底棲生活や繁殖行動にどのような点で役立っているのか、興味深いところでもあります。

 

 

飼育 

こちらは水槽にやってきた当初のひれの伸びきっていないオス。 尻びれと尾びれ下部の赤橙色もまだ残っていて、この姿だけを見るとトウヨシノボリ(縞鰭型)と酷似した魚に見えます。 この後1ヶ月ほどでどんどんひれが伸びていきます。

内集団を湖岸で採集できる時期は繁殖期にあたるので、水槽で飼育を始めるて安定してくるとすぐに繁殖行動が見られるようになります。 だし、メスの腹部は他種ほどに膨らまないので、オスの行動をよく見ていないと繁殖行動を見逃してしまうかもしれません。 スは石などの下に巣穴を掘り、縄張りを形成しますが、これは産卵だけのためのもので、求愛行動をしないときは広い範囲を移動して他のヨシノボリを追い払う行動を見せます。

まのところ噛み付いて怪我をさせるような激しい闘争は見ていませんが、トウヨシノボリと同様にあまり高い密度で飼育しない方がいいでしょう。 サは何でも食べますが、やはり中でも動物性のエサを好むようです。

殖行動はオスが巣穴を作り出すところから始まります。 スは成熟したメスにしか求愛せず、成熟したメスは求愛を拒むことはあまり無い様子なので、オスが求愛を始めれば産卵に至る確立はかなり高いと思われます。 た、興味深いことにメスは成熟すると巣穴を持つオスに興味を示すようになり、巣穴の近くに寄って来るようになります。 れらの行動は産卵の効率を高めるのに有効な行動と考えることもできます。

槽での飼育にあたって特に気を配る点は無く、飼育しやすい魚です。 だし、他種よりも先に、水槽で最初に白点病にかかる傾向があるので、白点病に対する抵抗力がほかの魚より弱いのかもしれません。 し白点病が発症したら、水を交換して病原となる菌の密度を一気に減らし、塩を入れるだけでも治ってくれるでしょう。 た、流れが緩やかに保たれる水槽ではオスが中層を泳ぐ姿がよく見られます。 方、メスは動き回ること自体控えめにしているようにも見え、中層はあまり泳ぎません。 体が短期間しか見られない昆虫などを見ても思うときがありますが、子孫を残すために特化した行動を中心に生活している生き物として、いろいろ考えさせてくれる貴重なヨシノボリ のようです。

  2-(b) ビワヨシノボリの産卵の記録はこちらをクリック

 

★★★ ビワヨシノボリ ピクトリアル ★★★

 れの大きなオスが中層を泳ぐ姿はとても優雅で、他のヨシノボリには無い魅力があります。 姻色が強く出ると尻びれや尾びれ下部の赤橙色は消え、オリーブグリーンに染まっています。

 こちらは見てのとおり、体色の地味なメス。 様が不明瞭で、トウヨシノボリの特徴である体側中央の一列の赤いウロコがないことなどから本種であると判別できます。

 どの橙色は、婚姻色のピーク時には目の下や上唇にも現われます。 びれの基底上部には青い斑点が痕跡的に見られることがあります。

スの優雅な背びれは見る角度によって青白く輝いて見え、なんとも美しい姿になります。

 所的に生息する2種は、比べて見てみると違いは一目瞭然です。 熟したオスで比べるなら、頬に小斑点があればビワトウ、のどが橙色ならビワヨシです。 た、第1背びれが第2背びれより高く伸びていればビワトウ、低く小さければビワヨシです。

 較的判別が難しいのはメス。 番確実に見分けられるのはやはり頬の小斑点でしょうか。 ればビワトウ、無ければビワヨシです。 た、体に青く光るウロコがあるのはビワトウで、顔が丸くて鼻が短く、下あごが上に反り上がっているのがビワヨシです。

 

 スのひれは最終的にはこのくらいまで伸びます。 なり個性的な形態です。 らに、中層をよく泳ぐ魚なので、ひれをひらひらさせて泳ぐ姿がとても印象的です。

 

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